「今は『迷路』を楽しみたい」TEDで講演したヨーヨーパフォーマー・BLACKさんにインタビュー

「今は『迷路』を楽しみたい」TEDで講演したヨーヨーパフォーマー・BLACKさんにインタビュー

世界的な講演イベント「TED」でのプレゼンを無事終えて帰ってきたヨーヨーパフォーマンスの世界チャンピオン、BLACKさん。大阪で開催されたイベント「TED登壇者の話を聞け!俺聞けスペシャル『ヨーヨー世界チャンピオン BLACK登場』」で来阪された際、お話を伺うことができました。

TED(読:テド)はアメリカで年1回開催されているカンファレンス(講演)イベント。「Technology」「Entertainment」「Design」の頭文字をとったもので、これらに関するアイディアのプレゼンテーションが行われます。NHKの「スーパープレゼンテーション」でその一部始終を見たことがある人も多いでしょう。

そのモットー「ideas worth spreading (広める価値のあるアイデア)」を実現すべく、スピーカーとして呼ばれるのは各分野のまさにトップランナーのみ。Apple社の故スティーブ・ジョブズ氏やクリントン元アメリカ大統領、Wikipediaの創設者ジミー・ウェールズなど各界の第1人者が、彼らが今まさに関わっている最先端のアイディアについてライブで語る……というのが最大の特徴です。

すごいのはスピーカーだけではありません。聴衆はTEDの厳格な審査に合格し、そして会費・入場費を合わせて約100万円を支払う必要があります。TEDの掲げる「世界を良くする」という理想を共有し、そして実際にそれを実行している人だけが会場に入ることができます。スピーカーは短い持ち時間の中で、彼らにアイディアを伝えなければなりません。

BLACKさんはこのTEDに日本人スピーカーとして初めて登壇し、そしてスタンディングオベーションを受けるという大成功をおさめたのです。
BLACK 「ヨーヨーの達人への道」 | Video on TED.com

この時の様子は、BLACKさん自身による連載エッセイ【BLACKのTED出演記】が4回に渡ってニュースサイト「GIZMODO」にて掲載されています。

さてBLACKさんにとってTEDはどういう意味があったのでしょうか。

BLACKさんは振り返ります。

「世界チャンピオンになる前の自分は、ヨーヨーのことだけを考えていました。うまくなるのがうれしかった。幼いころにTVで見たヒーローみたいにかっこよく技をきめたかった。」

「そして世界チャンピオンになったけれど何も起こらなかったんです。その先にはもう道がなかったし世界は何も変わらなかった」

一度はシステム開発会社に就職するもヨーヨーをあきらめることはできずプロに転身。世界的サーカス団であるシルク・ドゥ・ソレイユの登録パフォーマーにも選ばれます。しかしそれでも少しずつしか変化が起きませんでした。

2010年に東京で開催されたTEDのフランチャイズイベント「TEDx Youth」に参加したことがBLACKさんの環境を変えることになります。「ヨーヨーにかける情熱についてスピーチしてみませんか」と、TEDに誘われることになったのです。

ヨーヨーそのものではなく「情熱」を語ることにBLACKさんは最初、戸惑いがあったそうです。

「(編注:今自身がやっていることは)ひょっとしたら超人的な、特別な才能を持った人のように見えるかもしれません。でもスポーツは苦手だったし体もものすごく硬かった。他の人はすぐできる簡単な技ができるようになるのに、自分には半年かかることもありました」

「それでも少しずつ上手になった。成功体験があるからやってこれたと思います。自分に情熱があったのかどうか、というのは自分ではちょっと分かりませんでした」

しかし、25歳にしてバレエ教室に通いはじめたり、世界的なジャグラーの映像を徹底的に研究したり、世界チャンピオンに上り詰めてもまだ探求をやめないその姿はたしかに「情熱」そのものです。

「TEDでの10分そこそこの持ち時間にヨーヨーに打ち込んだ16年分をすべて詰め込み、プレゼンテーションを完成させるにはかなりの凝縮が必要でした。とても一人ではできませんでした」

TEDでのテーマは、まさに外から引き出されたもの。プレゼンテーションを組み立て、そして聴衆に向かって解き放つその濃密な体験は確かにBLACKさんの世界を変えてしまったようです。

「TEDのすごいところはスピーカー、オーディエンス、スタッフの3者がみんな本気で『世界を変えることができる』と信じているところ」

TEDそのものはもちろん、そうした人たちの存在、自分のアイディアを他人に伝えるということ……TEDという体験を日本にもっと広めたい、「情熱」について共有したいと語るBLACKさん。

「パフォーマーとしてヨーヨーに関わり、ヨーヨーを楽しみたい人の『場』を広げていきたい思いは変わりません。でもそれだけじゃなくなった。」

「TEDに参加したことで色々なつながりができて、いろいろな出会いができました。その中で新しい目標ができて、また自分も変わっていくと思います。」

いったい、次はどこに向かって走り出していくのか聞いてみました。

「世界チャンピオンになった時に少し似ています。どっちに向かっていけばいいのか正直なところ手探りです。でも今回は、先が無いのではなく、道が多すぎて迷っている感じ。その迷路を楽しみたい」

世界チャンピオンになった時は、どこに向かえばいいのか分からなかったBLACKさん。今また誰も進んだことのない道を進むことになりましたが、今度は「楽しみたい」という彼は確実に変化しているようです。

大阪IT通信について

大阪IT通信は、『地域とITをむすぶメディア』です。大阪近郊の地域情報と全国のIT情報を発信していきます。

メールマガジンをご購読ください。
関西の最新IT情報をお届けします!